住宅を購入するときには住宅ローンを組むのが一般的ですが、大金を長期にわたって借りると、利息だけでも大変な出費になります。それゆえ、なるべく多くの自己資金(頭金)を用意するのが鉄則となりますので、両親に資金援助をしてもらう方も多いです。
しかし、贈与は受けただけでは高い税金がかかることでも知られています。税金で多くを取られてしまっては資金援助も行えませんが、住宅取得のための資金援助であれば、贈与税は優遇されるようになっています。
知っておけば安心して住宅取得のための資金援助も受けられますので、贈与と税金、そして優遇内容についてしっかりと理解を深めておきましょう。
贈与税とは、個人が年間に110万円(これを「基礎控除」と呼びます)以上の財産の贈与を受けたときにかかる税のことです。税率は以下の表の通りとなり、課税価格が増えるにつれて税率も上がります。
たとえば、1,000万円の贈与を受けたときを例に挙げて計算すると、基礎控除後の課税価格が1,000万円-110万円で890万円となります。これは上の表では1,000万円以下に当てはまるので、税率をかけて控除額を引きます。結果、890万円×30%-90万円の177万円が課税額となります。
1,000万円の贈与で177万円もの高額を課税されるとなると、両親もおいそれとは贈与できません。言ってみれば177万円を捨ててるのと同じであり、その分だけ頭金も目減りし、資金援助としての贈与の意味自体もなくなるとも言えます。
両親の思いやりを阻みかねない高額な贈与税ですが、政府は住宅取得のためという条件に限っては大幅に非課税枠を設けています。非課税枠は下の表の通りとなり、「良質な住宅」とは断熱等性能等級4相当以上や耐震等級2以上などの住宅を指します。
平成27年中であれば基礎控除と併せて、「良質な住宅」なら1,610万円、そうでなくとも1,110万円もの贈与について非課税となります。先ほどの177万円の税金が0円になるのですから、この効果は絶大です。
住宅取得のためであれば何でも良いというのではなく、細かな条件が決められているので代表的なものを挙げておきます。うっかりすると抜けてしまいかねないものもあるので、十分に注意をしてください。
上記の「住宅取得にかかる贈与税の非課税」だけでも十分なインパクトがあるのですが、他にも両親などからの贈与税をなくす方法があります。それが「相続時精算課税制度」です。
これは住宅取得資金の贈与を、贈与税ではなく相続税として扱うという制度です。もちろん贈与の瞬間には受贈者である両親は存命ですので、将来亡くなる時まで課税を延ばすということになります。
相続税として扱うからには、基礎控除額は贈与税の110万円ではありません。相続税の基礎控除額は3,000万円+相続人×600万円となるため、相続人が3人なら、1人につき1,600万円の非課税枠があるということです。また、税率も贈与税に比べて低く設定されています。
1つめの「住宅取得にかかる贈与税の非課税制度」をうまく使えば、親子間の財産移譲を非課税で行うことができます。
どうせ消費しきれず相続税として納めなければならない財産であるのなら、子どもの住宅取得を機会に節税しながら財産分与を始めよう。そのように考える、ちょっとした財産のある高齢者世帯は少なくないはずです。
そもそも相続する財産がそんなにないのなら、2つめの「相続時精算課税制度」で贈与税をゼロにもできるのです。なお、両制度は同時に使うこともできます。
ただし、節税額を多くしようとしすぎるあまり、両親の老後の生活設計を危うくしないように気をつける必要があります。また、両制度とも確定申告が必要となりますので、こちらも忘れないよう注意が必要です。