住宅ローンを組む際に不動産広告を見ても、実際に銀行マンとローンの打ち合わせをしても、こちらが特に何も告げなければ自動的に返済方式は「元利均等」となっています。しかし、返済方式にはもうひとつ、「元金均等」が存在します。このことを全く知らないまま住宅ローンを契約する人も少なくないのではないでしょうか。
元金均等返済と元利均等返済、言葉は非常によく似ていますが、内容は大きく異なります。重要となる住宅ローンの返済負担も大きく変わりますので、元金均等と元利均等のそれぞれの基本や特徴について、しっかりと知っておきましょう。
まずは元金均等返済です。利用されることはこちらの方が圧倒的に少ないのですが、仕組みは比較的簡単なので、元金均等返済から見ておきます。
元金均等返済は読んで字のごとく、毎月の返済額のうち「元金」が占める部分が返済期間ずっと「均等」である返済の方法のことです。3,000万円を35年間、金利が1%で変動しなかったときの毎月の返済額を例に挙げます。
毎月の支払額のうち、元金部分が83,333円で一定であることが、上の表を見ると分かります。この83,333円という数字は、元金の3,000万円を360回の返済回数で割ったものです。
利息部分は、その時点での元金残高に対して計算されますので、支払いを重ねるにつれて減っていきます。よって、返済額は当初こそ高めなものの、徐々に負担は減っていき、返済期間が過ぎるにつれて利息負担が減少し、最終返済時には元金残高がほとんどなくなるために利息負担も非常に小さくなります。
次に、元利均等返済について見ていきます。先ほどの元金均等返済の表と比較しながら見ていただけると、違いが分かりやすいでしょう。
元利均等返済でまず注目していただきたいのは、最右列の返済額です。元金均等返済ではばらばらとなっていた返済額が、元利均等返済では96,491円で均等になっています。
元利均等返済の「元利」は、「元金と利息」の略なのです。元金と利息の合計、つまり月々の返済額が返済期間ずっと「均等」である返済の方法が元利均等返済となります。
返済額を決定する時点での残高に対して利息部分が決定することは先ほどと同じなので、その分だけ元金部分を返済当初は減らし、返済期間が増えるにつれて増やすことで、返済額を一定に保っています。
このため、金利が高くなればなるほど、返済期間が長くなればなるほど、当初の返済額に占める元金部分が少なくなり、なかなか元金が減らないという事態も生じます。
しかし、元利均等返済の最大の長所は、分かりやすいことです。毎月一定の金額を返済するので、まるで賃貸住宅の家賃を払うようにローンを返済することができます。不動産会社の広告でこの方式が多用されるのは、このあたりにも理由があるのでしょう。
元金均等か元利均等かで迷った場合には、上の2つの表の最下段、総返済額に注目してください。下の元利均等返済の方が総支払額は多いことが分かります。しかし総返済額が少ないことを理由に、元金均等返済の方が有利だと断じては早計です。
というのも、元金均等返済の方が少ないのは、当初から比較的多く元金を返済しているからです。しかしその分、家計に占める住居費の割合が高くなり、ある程度の期間が経過するまではやりくりが苦しい年月が続きます。そもそも、頭金が足りない(≒お金に余裕がない)ためにローンを組むわけなので、生活に大きな支障をきたす可能性すらもあります。
それに、元利均等返済でも総返済額を減らす方法があります。それはまとまった金額の手持ち資金が貯まり次第、予定より早く返済する「繰り上げ返済」です。家計の様子を見ながらこまめに繰り上げ返済を行い、逐次元金を減らすことができれば、家計が破綻するリスクを最低限に抑えながら、元金均等返済と同等またはそれ以上に総返済額を抑えられます。
ということは、2つの返済方式のどちらを選ぶかを決定するポイントは、繰り上げ返済が簡単に(手数料無料で)できるかどうかというところです。繰り上げ返済の条件が厳しくないなら、元利均等返済を選択しておけば返済も分かりやすく、負担も抑えやすくなります。
元金均等返済と元利均等返済は、1字しか違わないので見落としてしまう場合もありますが、上の表のように全く違った返済方式です。
ほとんどの方は元利均等返済を選択することになるのですが、元金均等返済を選んだ方が有利だったということも無いわけではありません。特に金利が高くなるほどその差は大きくなるので、将来の金利が予測できない変動金利を選ぶ人ほど慎重になる必要があります。